空き家の火事で責任を問われるのは誰?原因と対策を解説
こんにちは!栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」の土屋です。
「空き家で火事が起きたら、責任を問われることになるの?」
「放置している家が、近所に迷惑をかけていないか心配…」
「火災を防ぐために、どんな管理をしておけば良いのだろう?」
こんな不安をお持ちではありませんか?
実は、空き家は人が住んでいる住宅よりも火災のリスクが高まる傾向があり、場合によっては所有者が法的責任を問われることもあります。
今回は、空き家の火災が発生する主な原因とリスク、所有者が負う可能性のある法的責任、そして火災を未然に防ぐための具体的な対策について詳しく解説します。
空き家の火事はなぜ起きる?よくある原因とリスクを確認
空き家で火事はなぜ起こるのでしょうか。
その主な理由は、空き家には人が住んでいないために管理の目が行き届かない状態になりやすいためです。
その結果、次のような火災要因が重なりやすくなります。
- 不法侵入者などによる放火
- 漏電やガス漏れによる発火
- 敷地内の枯れ草や雑草などへ、たばこの吸い殻が引火
- ネズミなどの小動物による配線損傷による発火
また、空き家は人の気配がなく、日常的な点検や清掃が行われにくい環境にあります。
ポストにチラシが溜まり、雑草が伸び放題になっていると、外から見て「人が住んでいない家」として目立ちやすく、不審者に狙われるきっかけにもなります。
さらに、長期間使われていない電気設備やガス配管・配線は劣化が進みやすいという特徴も。
もし異常があっても、住人がいないために「気づく人がいない」可能性が高いのです。
このように、管理の行き届かない空き家では、放火・漏電・ガス漏れ・たばこのポイ捨てなど、さまざまな要因が複合的に火災を引き起こしやすい状態になっています。
火事が起きたとき、所有者にどんな負担がある?
空き家で火事が実際に起こってしまうと、所有者には以下のような負担・責任が生じる可能性があります。
- 解体費用の負担:焼け落ちた建物は安全上の理由から解体が必要となる
- 固定資産税の増額:「住宅用地特例」が外れ、税負担が数倍に上がることもある
- 近隣住宅への波及被害:延焼によって隣家や周囲の建物に損害を与えるおそれがある
- 資産価値の低下:火災による焼損や汚損により、土地・建物の売却価格が下落する
このように、空き家の火災は管理不全が引き金となり、経済的損失や周囲への影響を拡大させるリスクがあるのです。
火事が起こった場合の空き家の資産価値・売却については、「火事のあった家の売却を解説!価格への影響や告知義務、売却方法は」をご参照ください。
空き家の火事で責任を問われるのは誰?所有者の法的責任を解説
もし空き家で火事が起きて、近隣の家にも被害が及んだ場合、「所有者が責任を問われるのでは?」と不安に感じる方は多いでしょう。
結論から言いますと、空き家の火災で所有者が法的責任を負うのは、所有者に「重大な注意義務の違反(重過失)」が認められた場合に限られる可能性が高いです。
重過失とみなされるケースとは
火災による損害賠償責任は、「失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)」で定められており、重大な注意義務違反(重過失)がない限り、責任を問われないとされています。
次のように、空き家の所有者が著しく注意を欠いた管理をしていた場合は、重過失とみなされる可能性があります。
- 電気設備や配線の劣化を指摘されていたのに修理をせず放置した
- 可燃物(ごみ、古い家具、紙類など)を長期間放置しており、過去に軽微な火災(ボヤ)があったのにもかかわらず適切な対策を取らなかった
- 自治体などからの助言・指導、勧告、命令を無視し続けた
- 放火されやすい環境(雑草が伸び放題・ごみが溜まっている・夜間無照明がないなど)を長期間放置した
重過失とは、法律上、著しい注意義務を怠り、わずかな注意を払えば火災を避けられたはずの状態を指します。
ほとんど故意に近い対策不足と考えればわかりやすいでしょう。
このような状況が認められると、所有者が火災の原因を「作った」と判断され、延焼によって他人に損害を与えた場合は損害賠償の責任を負う可能性があります。
第三者(放火など)が原因の火災はどうなる?
一方で、放火や不法侵入者のいたずらなど、所有者以外の第三者が引き起こした火災については、所有者に過失がなければ、法的責任を問われるケースは少ないと考えられます。
ただし、空き家の所有者が放火されやすい状態(雑草やごみの放置・夜間無照明をつけないなど)を長期間放置していた場合は、「管理が不十分だった」として、結果的に責任を問われる可能性があります。
法的責任がなくても、「道義的責任」が問われる可能性はある
たとえ法律上の損害賠償責任を負わない場合であっても、空き家の所有者として「道義的責任」が生じる可能性はあります。
火災によって近隣住民に被害や不安を与えてしまった場合、法律で定められていなくても、所有者として状況説明や謝罪、お見舞い金を支払うといった社会的な配慮を行うケースは少なくありません。
こうした対応は法的義務ではありませんが、トラブルの再発防止や近隣との関係維持に役立つため、結果的に所有者の負担を軽減することにもつながります。
空家等対策特別措置法による「特定空家等」や「管理不全空家等」の指定
2015年(平成27年)に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、倒壊・火災・衛生面などで危険がある建物を、自治体が 「特定空き家」または「管理不全空き家」として指定できる制度があります。
指定を受けると、自治体から助言・指導→勧告→命令と段階的に改善を求められ、改善されない場合は、行政代執行(強制的な撤去・修繕) の対象となることも。
命令に従わない場合は、過料が科される可能性もあります。
また、行政代執行が行われた場合、その費用は所有者に請求される仕組みです。
近年の法改正では、空き家の適切な管理を促すための規定が強化されており、所有者が責任を持って管理する姿勢がより一層求められています。
「特定空き家」や「管理不全空き家」について詳しくは、下記のコラムで解説していますので、ぜひあわせてご参照ください。
特定空き家と管理不全空き家の違いとは?近年の空き家の現状も確認
空き家の火事対策は所有者の責任!今すぐできる実践的な方法
空き家の火災を防ぐには、想定される原因を一つずつ減らしていく日常的な管理が重要です。
ここでは、所有者が今すぐ現地で実施できる「具体的な防火行動」を、原因別に解説します。
①放火・不法侵入を防ぐには「管理されている空き家」に見せる
放火や不法侵入は、「人が出入りしていない家」が狙われやすい傾向があります。
逆に言えば、「定期的に人が出入りしていて、確認している家である」という印象を与える工夫をすれば、防犯・防火の抑止力になるでしょう。
【犯行の抑止につながる工夫の例】
- 人感センサー付きライトやソーラーライトを玄関や庭に設置する
- 郵便受けのチラシや投函物をこまめに回収する
- 玄関や門扉を常に施錠し、開け放しにしない
- 建物や敷地の定期的な見回りを実施する
また、放火を未然に防ぐには、近隣との関係づくりも重要です。
日ごろから挨拶や声かけをしておけば、異常があった際にも気づいてもらいやすく、連絡先を伝えておくと、不審な人物を見かけたときにすぐ知らせてもらえるかもしれません。
②漏電やガス漏れを防ぐには「設備の安全確認」を徹底
空き家の設備は、使っていなくても劣化します。
長期間放置すれば、ほこり・湿気・老朽化によって、漏電やガス漏れを引き起こすおそれがあるため、電気・ガス設備の安全チェックを怠らないことが大切です。
【電気設備のチェックポイント】
- 使用していない電化製品のコンセントをすべて抜く
- ブレーカーを落として通電を止める
- コンセントや配線にほこり・焦げ跡・ひび割れがないか確認する
【ガス設備のチェックポイント】
- ガスの元栓を完全に閉める
- プロパンガスボンベが残っている場合は業者に撤去を依頼する
- 配管や接続部の劣化を専門業者に点検してもらう
電気やガスの不具合は、火災の原因になりやすいため、長期間使用しない場合は遮断しておくと安心です。
③小動物による被害を防ぐには「侵入経路を塞ぐ」
ネズミなどの小動物が屋内に入り込むと、配線をかじって火花が発生し、火災につながるおそれがあります。
動物の侵入を防ぐには、必要に応じて下記のような対策をとりましょう。
【対策例】
- 通気口や床下の開口部に金網を設置する
- 窓の隙間や屋根裏の通気口を点検し、必要に応じて封鎖する
- ネズミ駆除剤や粘着シートを設置し、定期的に確認する
- ゴミや食べ物を放置せず、空き家内を清潔に保つ
侵入を防ぐ物理的な対策を行うことで、配線損傷による火災のリスクを下げることができます。
④ポイ捨て・不法投棄による引火を防ぐには「外周環境の整備」を
荒れた敷地は、通行人のポイ捨てや不法投棄を誘発しやすくなります。
草木やゴミが積もれば、それ自体が火種となるため、敷地まわりの清掃を習慣にしましょう。
【対策例】
- 敷地内の雑草や枯れ草を刈り取り、燃えやすいものを置かない
- 不法投棄されたゴミは早めに撤去する
- 庭や塀の周辺を定期的に清掃し、きれいな外観を保つ
- 近隣の方に「異常を見たら連絡してほしい」と声をかけておく
整った外観は、「管理されている土地」という印象を与え、ポイ捨てそのものを防ぐ効果が期待できます。
空き家の管理が難しい・火事のリスクを回避したいなら不動産売却の検討を
空き家には火事以外にも、放置することで次のような問題が生じやすくなります。
- 老朽化による倒壊
- 不法侵入・不法投棄
- 悪臭・害虫の発生
空き家のリスクは放置を続けるほど、管理・費用・安全のいずれの面でも負担は大きくなります。
空き家放置リスクは、「空き家放置はリスクがたくさん!活用方法やすぐできる解決方法をご紹介」のコラムでお伝えしていますので、ぜひあわせてご参照ください。
ただし、どんなに丁寧に管理していても、火災リスクやそのほかのさまざまなトラブルが起こる可能性をゼロにすることは困難です。
そのため、空き家の火災リスクを最も確実に減らす方法としては、「空き家を手放すこと」という選択肢も考えられます。
空き家を「どう手放すか」を検討しよう
所有する空き家について、「今後も住む予定がない」「管理が難しくなってきた」「管理に手が回らない」と感じる場合は、売却や解体を含めた手放す選択を検討しましょう。
立地条件、建物の状態、売却までの希望期間などを踏まえて検討することが大切です。
主に次のような方法があります。
- 不動産仲介で売却
- 不動産買取で売却
- 解体して「土地」として売却
売却スケジュールに余裕があるなら、不動産仲介を利用してじっくりと条件の良い買い手を探すのもおすすめです。
一方で、できるだけ早く売りたいと希望される場合は、不動産会社に直接買取を利用することで、スムーズに現金化ができるケースもあります。
また、「建物の状態は良くないが立地条件は良い」など、土地そのものの価値が高く、売れやすい条件を備えているなら、解体して土地として売却する方法が適していることもあります。
仲介と買取の違いや、解体については下記のコラムで詳しく解説しています。
不動産売却の仲介と買取の違いを解説!メリット・デメリットもご紹介
空き家は解体して売却するべき?メリットデメリットや費用目安を解説
自分で空き家の管理が難しい場合は「専門業者への委託」も選択肢
「まだ空き家を手放したくはないが、自分では管理が難しい」という場合には、空き家管理の専門業者に委託する方法もあります。
定期巡回・清掃・換気などを代行してくれるため、火災や老朽化のリスク軽減につながります。
また、空き家の所有を続ける場合には、火災保険への加入・見直しも検討しておくと安心です。
空き家の火災保険については、「空き家でも火災保険に加入が必要?知っておきたいポイントをご紹介」で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
空き家の火事リスクと責任を理解し、適切な対策を講じましょう
空き家の火災は、放火、電気設備の劣化、たばこのポイ捨てなど、さまざまな要因で発生する可能性があります。
また、適切な管理を怠ったと判断され、空き家の所有者に「重過失」が認められた場合には、高額な損害賠償責任を負う可能性もあります。
空き家の火災を防ぐには、定期的な点検や清掃、設備の安全確認、近隣との連携といった日常的な管理が不可欠です。
ただし、距離や時間の問題などで空き家の管理が難しい場合は、専門業者への管理委託や、不動産売却といった選択肢も視野に入れておきましょう。
空き家を放置せず、所有者として責任を持って行動することが、火災リスクを最小限に抑える第一歩となります。
早めに状況を見直し、必要な対策を講じることが、将来のトラブルを防ぐための最善の対策と言えるでしょう。
栃木県で不動産の売却を検討している方は、栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」に、ぜひご相談ください。
宇都宮店 土屋 清
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