不動産売却におけるインスペクションとは?活用のメリット・注意点
こんにちは!栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」の土屋です。
「インスペクションって、具体的に何をすること?」
「活用すると、どんなメリット・デメリットがある?」
「費用はどれくらいかかるのだろう?」
そんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
インスペクション(建物状況調査)は、住宅の状態を専門家がチェックする仕組みで、売却前に実施することで建物の信頼性を高め、売却後のトラブルを防ぐ効果があります。
今回は、不動産売却におけるインスペクションの基本的な内容から、実施するメリット・デメリットをご紹介。
また、不動産売却でインスペクションを実施する際のコツや注意点まで詳しく解説します。
不動産売却におけるインスペクションとは?
簡単に言いますと、インスペクション(建物状況調査)は、「住宅の健康診断」です。
不動産売却後に「雨漏りがあった」「柱が傾いていた」などの不具合が見つかると、買い主とのトラブルに発展する可能性があります。
特に売り主は、2020年(令和2年)の民法改正によって「契約不適合責任」を負うことになりました。
これは、引き渡した建物が契約内容と異なる状態だった場合に、修繕や損害賠償などの責任を求められる可能性があるというルールです。
こうしたトラブルを防ぐため、専門家が建物の劣化や不具合をチェックし、建物の現状を客観的に把握するのが、インスペクションです。
一般的には売却活動を始めるまでに行うことが多いですが、買い主が契約前に実施するケースもあります。
インスペクションの基本は「非破壊検査」である
調査は、国が定めた講習を受けた建築士(既存住宅状況調査技術者)が行います。
建物を壊さずに外観を確認する、目視中心の「非破壊検査」で、調査時間は1〜3時間程度です。
この非破壊調査では、主に次の2つのポイントを確認します。
- 構造耐力上主要な部分:基礎、柱、梁、床、屋根などにひび割れや傾きがないか
- 雨水の侵入を防ぐ部分:屋根、外壁、窓まわり、天井裏などに雨漏りや劣化がないか
費用は、物件の規模や調査を行う業者にもよりますが、6万円程度〜が目安です。
調査の実施は、買い主の場合は売り主の同意が必要ですが、売り主・買い主のどちらでも行えます。
依頼を希望した側が費用を負担するのが一般的です。
業者によって詳細調査のオプションも用意されている
国の定める「非破壊検査」のほかに、業者によっては「詳細調査」を追加できます。
代表的な調査の種類と費用の目安は以下の通りです。
- 床下調査(潜入調査):3万円前後
- 屋根裏侵入調査:2万円前後
- 給排水管路検査:5,000~2万円程度
- シロアリ検査:5,000円~
- 設備機器検査:5,000~2万円程度
- 赤外線調査(サーモグラフィカメラ):1~2万円程度
オプションを組み合わせることで、見えない部分までより正確に把握できます。
インスペクションを不動産売却に活用するメリット・デメリット
インスペクションを不動産売却に活用するメリット・デメリットは、次の通りです。
インスペクション活用のメリット
インスペクションを活用すると、住宅の状態を客観的に把握できるだけではありません。
「どんな不具合があるのか」「修繕の必要があるか」「取引後のトラブルにつながる可能性はないか」を事前に確認できます。
建物のコンディションを「見える化」することで、売り主・買い主の双方が安心して取引を進められる点が大きなメリットです。
【売り主側のメリット】
- 建物の状況・価格設定の根拠を明確にでき、買い主からの信頼を得やすくなる
- 事前に不具合を把握しておけば、契約不適合責任のトラブルを防ぎやすい
- 調査済みの住宅として差別化でき、売却をスムーズに進められる
【買い主側のメリット】
- 事前に建物の状態を正確に確認でき、安心して購入判断ができる
- 将来的な修繕時期の見通しを立てやすく、購入後の不安を軽減できる
このように、インスペクションを実施していれば、「引き渡した後に買い主から不具合を指摘され、『隠していたのでは?』と疑われる」といったトラブルも防ぎやすくなります。
また、買い主側が「調査を行わずに購入した結果、想定外の高額な修繕費がかかった」といったリスクの回避にもつながるでしょう。
インスペクション活用のデメリット
一方、インスペクションを活用する場合、下記のデメリットがあります。
- 調査費用がかかる
- 売り出し・契約の時期が遅れる可能性がある
インスペクションは、「売り主・買い主のどちらが実施するか」によって費用負担が異なりますが、一定の費用がかかる点は理解しておく必要があります。
また、インスペクションを行う場合は、申し込みから調査の実施、結果報告までの流れがあるため、当然実施しない場合に比べて日数がかかるでしょう。
さらに、調査結果によって欠陥が明らかになれば、売り主側は修繕対応や価格の見直しが求められる可能性があります。
売り主・買い主のどちらにとっても、欠陥が見つかると契約条件の調整が必要になり、手続きに時間を要するケースもあります。
もっとも、あとから不具合が発覚してトラブルになるより、先に調べて対処しておくほうが結果的には安心につながります。
しかし、売り主にとっては「売り出しのタイミングが遅れる」、買い主にとっては「新生活のスタート時期が後ろ倒しになる」などのデメリットが生じる可能性がある点も、あらかじめ理解しておきましょう。
インスペクションを活用した不動産売却の進め方と高く売るコツ
インスペクションを活用するなら、売却活動を始める前のできるだけ早い段階に行うと効果的です。
例えば、査定を依頼する前に実施しておくのも選択肢の一つです。
先に建物の状態を把握しておけば、「インスペクション済みの物件」として査定を受けられるため、不動産会社も根拠のある評価を出しやすいからです。
インスペクションを実施したあとの不動産売却の流れは、次の通りです。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 調査結果をもとに、現状のまま売るか・修繕するかを検討し、必要に応じて対応する
- 現状・修繕内容などの条件を踏まえて価格設定を行う
- 「インスペクション実施済み」など調査結果を提示して、売却活動を開始する
- 買い主に調査結果を説明し、売買契約を締結する
- 売却代金の決済を行い、物件を引き渡す
では、この流れのなかで、どんな点に気を付ければ高く売ることにつながるのか。
ここからは、その具体的なコツを紹介します。
高く売るためのコツ①複数社へ査定依頼し、信頼できる会社を見極める
インスペクションを生かして高く売るには、まず複数の不動産会社に査定を依頼して比較するのがおすすめです。
査定時に「インスペクションを実施した」と伝えることで、各社の反応や提案内容を比べられます。
調査結果を販売戦略にどう生かすか、また修繕を行うべきかといった点についても相談に乗ってくれる会社なら、インスペクションの活用に慣れているといえるでしょう。
こうした会社なら、建物の強みを的確にアピールしながら売却を進められるため、結果的により高い価格での成約につながりやすくなります。
高く売るためのコツ②修繕の有無に応じて価格設定を最適化する
インスペクションの結果を踏まえ、修繕を行うか現状のまま販売するかを決めたら、その内容に合わせて価格を戦略的に設定しましょう。
修繕後は「改修済みの安心物件」として、相場より少し高めに設定できる場合があります。
一方で、修繕に費用がかかる場合は、あえて現状販売とし、リフォーム前提の購入層へ訴求するのも有効です。
高く売るためのコツ③インスペクションの結果は誠実に開示する
インスペクションの結果を包み隠さず、誠実に説明しておくと、買い主からの信頼を得られ、契約交渉がスムーズになります。
また、契約や価格交渉の場で調査報告書を提示すれば、建物の状態を根拠を持って説明できるため、価格交渉でも有利に進めやすくなります。
なお、売り主には不具合などを正確に伝える「告知義務」があり、これを怠ると契約不適合責任の対象となる場合も。
調査結果を誠実に開示することで、法的リスクを避けられます。
高く売るためのコツ④瑕疵保険に加入して買い主の安心感を高める
既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅の検査と保証がセットになった保険です。
加入にはインスペクションに合格していることが条件となり、引き渡し後に欠陥が見つかっても補修費用が保険でカバーされます。
「インスペクション済み・瑕疵保険付き」の物件として販売すれば、買い主の安心感が高まり、価格交渉でも有利に働くことがあります。
不動産売却でインスペクションを実施する際の注意点
最後に、不動産売却でインスペクションを実施する際の注意点をご紹介します。
①国交省登録の「既存住宅状況調査技術者」に依頼する
インスペクションを依頼する際は、国土交通省が定める講習を修了し、登録を受けた「既存住宅状況調査技術者」の資格を持つ建築士に依頼しましょう。
また、業者を選ぶ際は、詳細調査の対応有無・内容も確認しておくと、必要に応じて建物の状態をより正確に把握できます。
②結果に応じて専門家に相談し、費用対効果を考えて対応を決める
インスペクションで欠陥や劣化が見つかった場合、慌てて修繕を決める必要はありません。
不動産会社や建築士など専門家に相談し、修繕の必要性や費用対効果を踏まえて判断しましょう。
修繕によって建物の印象が良くなれば高値売却につながる場合もありますが、費用がかさむ場合は現状のまま販売するほうが効率的な場合もあるからです。
古い家の取扱いや売却の手順については、「古い家を売る方法をご紹介!手順や注意点、支払うお金など詳しく」で詳しくお伝えしていますので、ぜひあわせてご参照ください。
③国や自治体の補助金が使えるか調べておく
インスペクション実施や、必要に応じた修繕を行う際には、国や自治体の補助金・助成制度が利用できる可能性があります。
そのため、「自分の物件が補助対象になるか」「申請前に調査が必要か」「工事を行う必要があるか」などを、売却前に不動産会社や建築士と一緒に事前に確認しておくことが大切です。
不動産売却でインスペクションを活用し、安心できる取引の実現しよう
インスペクション(建物状況調査)は、建物の状態を専門家が客観的に確認するもので、売り主・買い主の双方が安心して取引を進めるための重要な手段です。
インスペクションを事前に実施しておけば、契約不適合責任のリスクを減らし、買い主からの信頼を得やすくなります。
費用や手間はかかりますが、調査結果を生かして価格設定や販売戦略を工夫すれば、より納得感のある売却を実現できるでしょう。
また、資格を持つ技術者への依頼や、修繕判断・補助金制度の確認など、基本的な注意点を押さえておくことで、安心して手続きを進められます。
栃木県で不動産の売却を検討している方は、栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」に、ぜひご相談ください。
宇都宮店 土屋 清
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